ある若夫婦のお話です。
高橋正樹は、妻の洋子と結婚して半年。
東京の八王子に、小さいながらも夢のマイホームを30年ローンで手に入れた。
まだ子供はいないため、お互いにまだ働いている。
大手メーカーに勤める正樹は、残業もたくさんあり激務が続いていたが、
それでも妻の洋子が作ってくれた愛妻弁当があればどんなに睡眠時間が少なくても
頑張れる、そのくらい新婚生活に酔いしれていた。
そんな愛妻弁当をニヤニヤしながら食べる正樹は、同僚たちから羨ましい視線を
浴びる毎日を過ごしていたのだ。
しかし、異変がおとずれる。
いつもは愛妻弁当を食べているはずの正樹が、今日はカップラーメンとおにぎり、
という組み合わせ。そして、表情はさえない。
うつむきながら、ひとり寂しく昼食をとっている。
『 あの?、今日はお弁当じゃないんですか? 』
こういうとき、新人はレポーター役に指名される。会社の伝統だそうだ。
『 ちょっと喧嘩をしてしまってね・・・ 』
カップラーメンをすすっていても涙をすすっているように聞こえてくるぐらい
悲しく見えた。
こんな昼食が1か月ぐらい続いたある日のこと
仕事から帰り机の上を見ると「 実家へ帰ります。心配しないで 」
と書き置きがあったのだ。
洋子の実家は、福島県のいわき市にある。名前の通り、小さい頃から
太平洋を見ながら育った、といつも自慢していた。親は食品加工の会社を
経営していたが、交通事故で両親ともに他界。今は兄が継いでいるらしい。
もうすでに深夜の1時。電話をするには遅すぎる。
電話は翌日の朝、かけることに決めた。
― 翌日 ―
洋子は両親のお墓参りに来ていた。
墓地は小高い山の中腹にあり、そこから太平洋が一望できる。
「海の見える丘」そんな場所で洋子の両親は眠っている。
供花を捧げ、果物を供え、線香に火をつけながらそっとささやく。
『 今年は引っ越しがあったから、お正月も来れなくてごめんね。 』
線香のあの落ち着いた香りが潮風とブレンドされて、空へと昇っていく。
『 私ね、喧嘩しちゃったんだ。もう1か月もだよ。私らしくないでしょ。
仲直りのきっかけが見つからなくてね。 でも、お父さんとお母さんに会ったら
素直になれそうな気がしたんだ。 私らしいでしょ、えへへ(^o^) 』
まだ2月だというのに陽の光は穏やかで、梅の花がいくつか咲いている。
『 やっぱりいいなぁ、ここは。山があって、海が見えて、気分が浄化される。
私も将来どこかのお墓に入るときは、
自然が豊かで景色の素敵な場所がいいな 』
目の前に広がる太平洋は、こうしていつも洋子に元気を与えてくれるのだった。
実家に寄ると、正樹から電話があったよ、と兄から告げられた。
正樹は、もう洋子が帰ってこないんじゃないか、
という不安につぶされそうな気持ちで帰宅すると
寝室ではすでに洋子がすやすやと寝息をたてていた。
どういうつもりなんだ! と言いたかったが、言えばまた喧嘩になってしまう。
( 事情は明日、ゆっくり話を聞くことにしよう )
冷静に、冷静に、と自分に言い聞かせながら、正樹も寝床についた。
朝起きると、洋子はすでに出勤したあとだった。
身支度をととのえ、玄関を出るところである異変が。
そう、1か月支給停止となっていた愛妻弁当がそこに置いてあったのだ。
事情はまだ聞いていないが、とりあえずほっと胸をなでおろす正樹。
昼食は、いつも会社の屋上で同僚たちと食べている。
【 愛妻弁当 】 と書かれたいつものその包みをあけると
そこには手紙が入っていた。
「 残さず食べなさい! 」
まるで子供みたいだな、と自分で笑ってしまう。
中身はいつもより海の幸が多めに入っていた。
ニヤニヤしながら食べていると、わざびが入っているわけでもないのに
なぜが涙があふれてくる。
『 みっともねえな。カップラーメンみたいに食べるんじゃないよっ 』
同僚の目には、まるで、すすっているように見える正樹だったのだ。
このお話はフィクションです。
高橋正樹は、妻の洋子と結婚して半年。
東京の八王子に、小さいながらも夢のマイホームを30年ローンで手に入れた。
まだ子供はいないため、お互いにまだ働いている。
大手メーカーに勤める正樹は、残業もたくさんあり激務が続いていたが、
それでも妻の洋子が作ってくれた愛妻弁当があればどんなに睡眠時間が少なくても
頑張れる、そのくらい新婚生活に酔いしれていた。
そんな愛妻弁当をニヤニヤしながら食べる正樹は、同僚たちから羨ましい視線を
浴びる毎日を過ごしていたのだ。
しかし、異変がおとずれる。
いつもは愛妻弁当を食べているはずの正樹が、今日はカップラーメンとおにぎり、
という組み合わせ。そして、表情はさえない。
うつむきながら、ひとり寂しく昼食をとっている。
『 あの?、今日はお弁当じゃないんですか? 』
こういうとき、新人はレポーター役に指名される。会社の伝統だそうだ。
『 ちょっと喧嘩をしてしまってね・・・ 』
カップラーメンをすすっていても涙をすすっているように聞こえてくるぐらい
悲しく見えた。
こんな昼食が1か月ぐらい続いたある日のこと
仕事から帰り机の上を見ると「 実家へ帰ります。心配しないで 」
と書き置きがあったのだ。
洋子の実家は、福島県のいわき市にある。名前の通り、小さい頃から
太平洋を見ながら育った、といつも自慢していた。親は食品加工の会社を
経営していたが、交通事故で両親ともに他界。今は兄が継いでいるらしい。
もうすでに深夜の1時。電話をするには遅すぎる。
電話は翌日の朝、かけることに決めた。
― 翌日 ―
洋子は両親のお墓参りに来ていた。
墓地は小高い山の中腹にあり、そこから太平洋が一望できる。
「海の見える丘」そんな場所で洋子の両親は眠っている。
供花を捧げ、果物を供え、線香に火をつけながらそっとささやく。
『 今年は引っ越しがあったから、お正月も来れなくてごめんね。 』
線香のあの落ち着いた香りが潮風とブレンドされて、空へと昇っていく。
『 私ね、喧嘩しちゃったんだ。もう1か月もだよ。私らしくないでしょ。
仲直りのきっかけが見つからなくてね。 でも、お父さんとお母さんに会ったら
素直になれそうな気がしたんだ。 私らしいでしょ、えへへ(^o^) 』
まだ2月だというのに陽の光は穏やかで、梅の花がいくつか咲いている。
『 やっぱりいいなぁ、ここは。山があって、海が見えて、気分が浄化される。
私も将来どこかのお墓に入るときは、
自然が豊かで景色の素敵な場所がいいな 』
目の前に広がる太平洋は、こうしていつも洋子に元気を与えてくれるのだった。
実家に寄ると、正樹から電話があったよ、と兄から告げられた。
正樹は、もう洋子が帰ってこないんじゃないか、
という不安につぶされそうな気持ちで帰宅すると
寝室ではすでに洋子がすやすやと寝息をたてていた。
どういうつもりなんだ! と言いたかったが、言えばまた喧嘩になってしまう。
( 事情は明日、ゆっくり話を聞くことにしよう )
冷静に、冷静に、と自分に言い聞かせながら、正樹も寝床についた。
朝起きると、洋子はすでに出勤したあとだった。
身支度をととのえ、玄関を出るところである異変が。
そう、1か月支給停止となっていた愛妻弁当がそこに置いてあったのだ。
事情はまだ聞いていないが、とりあえずほっと胸をなでおろす正樹。
昼食は、いつも会社の屋上で同僚たちと食べている。
【 愛妻弁当 】 と書かれたいつものその包みをあけると
そこには手紙が入っていた。
「 残さず食べなさい! 」
まるで子供みたいだな、と自分で笑ってしまう。
中身はいつもより海の幸が多めに入っていた。
ニヤニヤしながら食べていると、わざびが入っているわけでもないのに
なぜが涙があふれてくる。
『 みっともねえな。カップラーメンみたいに食べるんじゃないよっ 』
同僚の目には、まるで、すすっているように見える正樹だったのだ。
このお話はフィクションです。



何処が有難いのでしょうか?
小説家になりたいのではないでしょうか?
いつでも黙って耳を傾けてくれる故郷(親のお墓)があるって素晴らしいと思います。墓参りは素直にしてくれますね。
ちょっとした喧嘩で一ヶ月ですか
それでもって、いきなり実家に帰るんですか
墓に独り言つぶやいたら元気がでるんですか
で、さんざん迷惑かけられた旦那は弁当ひとつでうれし泣きですか
すばらしいファンタジーですね
う??ん。
有り難い・・・というより、ちょっと有りえない・・・落ちに。
ショーエンkさん
あまり読書した事ないでしょ?
なんか、涙がこぼれそうになりました。当寺でも、亡くなった旦那さんとお話しながらお墓掃除や、お墓参りをするご婦人が数人いらっしゃいます。色々な時にお寺を訪れている方は、もっといらっしゃるとは思いますが、さすがにそこまではわかりませんよね。私は、宗教者としては、お墓不要と考えています。もともとの仏教にも無かったわけですし。お墓が無ければ、嫌な住職さんや、問題のあるお寺から、本当に信頼できる、尊敬できる住職やお寺へ移動が簡単になり、宗教界の目を覚まさせる事も可能ではないか、と考えるからです。ですが、日本人としては、普段のお墓参りや、お盆のお墓参りも、とてもいい風物詩だと思います。二世代、三世代、帰省してきた子供や孫と、などと、見ていてもとてもいい感じです。よりどころは、あったほうがいいのかもしれませんね。それぞれの感じ方で、いらない人、必要な人に分かれてもいいのかもしれませんね。ただ、お墓は高すぎますよね。跡継ぎのいない方がお墓を新しくしたいって相談してきても、安くない事もあり、色んな意味で再考してもらうようにしています。